今回は、手術を先延ばしにしたくなった時の心境について綴りたいと思います。
健康診断で「胃がんの疑いあり」と連絡を受け、その後の受診で治療方針の説明を受けました。
診察は驚くほどスムーズに進みました。
8月6日に受診した際、先生から提案された手術日は、わずか6日後の8月12日でした。
私は一瞬、言葉に詰まりました。
そして最初に口をついて出たのは、
「仕事を整理しなければいけないので、来週の入院は難しいです」
という言葉でした。
実際には、お盆の時期で大きな予定は入っていませんでした。
本来であれば、入院することは十分可能だったと思います。
それでもそう答えたのは、今振り返ると、心のどこかで現実を受け止め切れていなかったからかもしれません。
「本当にがんなのだろうか」
「そんなはずはない」
「こんな大事なことを今すぐ決められない」
そんな気持ちが一度に押し寄せていたように思います。
重大な出来事ほど、人は冷静に考えたいと思うものです。
だからこそ、すぐに決断することに抵抗を感じたのだと思います。
しかし、その言葉を口にした直後でした。
もう一人の自分が、心の中で問いかけてきました。
「それは本当に仕事の問題なのか」
「ただ先延ばしにしたいだけではないか」
「先に延ばして何か変わるのだろうか」
「むしろお盆の時期に入院した方が、仕事への影響は少ないのではないか」
そんな声だったように記憶しています。
実際には、ほんの数秒だったと思います。
5秒だったのか、10秒だったのかは分かりません。
でも私にとっては、とても長く感じられる時間でした。
そして私は、
「8月12日の手術でお願いします」
と改めて先生に伝えました。
今になって思うのは、人は大きな決断を迫られた時、まずはその場から少し距離を取りたくなるものなのかもしれない、ということです。
それは弱さというより、ごく自然な心の反応だったように思います。
病気に限らず、人生の大きな選択に直面した時には、不安もありますし、動揺もします。
すぐに答えを出せないこともあります。
私自身も、その瞬間は決して平静ではありませんでした。
だからこそ、もし将来、誰かが同じような状況に直面した時、
「決断したくない」
「少し待ってほしい」
そんな気持ちになったとしても、自分を責める必要はないように思います。
おそらく、多くの人が同じような心の揺れを経験するのではないでしょうか。
あの日の私は、たまたま数秒後に決断をすることができました。
でも今振り返ると、最も印象に残っているのは手術日を決めたことではありません。
大きな出来事に直面した時、人の心はこんなにも揺れるのだと、自分自身で実感できたことです。
その経験は、今でも静かに心の中に残っています。